放置された庭木が空き家売却の大きな障壁になる理由
空き家を売却しようと考えたとき、建物の状態ばかりに目が行きがちですが、実は「庭木・植栽」が原因で売却が難航するケースが増えています。特に相続で取得した実家など、長期間管理されていない物件では、庭木が想像以上に成長し、近隣トラブルや買主からの値引き交渉の原因となることがあります。
本記事では、空き家の庭木・植栽に関する具体的なトラブル事例を紹介しながら、売却前にどのような対処をすべきか、費用の目安や業者選びのポイントまで詳しく解説します。
空き家の庭木が引き起こす5つのトラブル事例
事例1:隣家への越境で損害賠償請求された
埼玉県にある築35年の空き家では、庭に植えられた桜の木が隣家の敷地に大きく越境していました。所有者は県外に住んでおり、年に1回程度しか現地を確認していなかったため、枝が隣家の屋根に接触し、瓦を破損させてしまいました。隣家から修繕費用として約25万円の請求を受け、さらに「今後も管理されないなら法的措置を取る」と警告される事態に発展しました。
2023年の民法改正により、越境した枝については、一定の条件を満たせば隣地所有者が自ら切除できるようになりました。しかし、その場合でも費用は空き家所有者に請求される可能性があり、放置することのリスクは高まっています。
事例2:落ち葉・害虫で近隣から苦情が殺到
千葉県の住宅街にある空き家では、庭のケヤキとクヌギが大きく成長し、秋になると大量の落ち葉が周辺道路や隣家の庭に散乱する状態でした。さらに、放置された枯れ葉にはゴキブリやムカデが発生し、近隣住民から自治会を通じて苦情が入りました。
所有者は清掃業者を手配しましたが、1回の清掃で5万円以上の費用がかかり、毎年同じ問題が発生するため、最終的には売却を決断しました。しかし、「近隣トラブルがある物件」として不動産会社から敬遠され、売却までに1年以上を要しました。
事例3:伸びた枝が電線に接触し停電の原因に
神奈川県の空き家では、庭に植えられていた杉の木が電線に接触し、強風の日に停電を引き起こしました。電力会社から緊急連絡を受けた所有者は、すぐに対応できず、最終的に電力会社が緊急伐採を行いました。
この場合、緊急対応の費用として約15万円が請求され、さらに「今後も同様の事態が起きた場合は全額負担となる」と通告されました。電線への接触は火災の原因にもなりうるため、非常に危険な状態だったのです。
事例4:竹林の侵食で隣地との境界トラブル
静岡県の山間部にある空き家では、敷地内の竹林が管理されないまま放置され、地下茎が隣地に侵入して筍が生え始めました。隣地所有者は農地として利用していたため、「作物に被害が出ている」として境界の明確化と竹の完全除去を求められました。
竹の除去は一般的な庭木以上に手間と費用がかかり、地下茎を完全に取り除くには重機を使った作業が必要でした。結果として除去費用は80万円以上となり、売却価格から大きく差し引かれることになりました。
事例5:庭木の繁茂で「管理不全空き家」に認定
2023年の空家等対策特別措置法改正により、「管理不全空き家」という新たなカテゴリーが設けられました。東京都多摩地区の空き家では、庭木が建物を覆い尽くすほど繁茂し、景観を著しく損ねているとして、この管理不全空き家に認定されました。
管理不全空き家に認定されると、自治体からの指導・勧告の対象となり、勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が解除され、税額が最大6倍になる可能性があります。庭木の放置が税負担増加につながる時代になっているのです。
売却前に庭木を整理すべき3つの理由
理由1:第一印象が売却価格に直結する
不動産売買において、買主が物件を内見する際の第一印象は非常に重要です。庭木が荒れ放題の物件は、「建物の管理も適当だったのではないか」という不信感を与え、値引き交渉の材料にされます。
実際の取引データでは、庭木を整理してから売却した物件と、そのまま売却した物件を比較すると、整理済みの物件の方が平均して5〜10%高い価格で成約しているという調査結果もあります。10万円の庭木整理費用で100万円以上の価格差が生まれることも珍しくありません。
理由2:買主の不安材料を事前に排除できる
庭木が越境している物件や、近隣トラブルの火種を抱えている物件は、買主にとって大きなリスクです。特に住宅ローンを利用する買主の場合、将来的なトラブルリスクを嫌い、購入を見送るケースがあります。
売却前に越境枝を剪定し、必要であれば隣地所有者との間で覚書を交わしておくことで、買主の不安を解消し、スムーズな売却につなげることができます。
理由3:売却後のトラブルを防止できる
庭木の問題を放置したまま売却した場合、引き渡し後に買主から「説明がなかった」「隠れた瑕疵だ」として損害賠償請求を受けるリスクがあります。特に越境問題は、売主が知っていたにもかかわらず告知しなかった場合、契約不適合責任を問われる可能性があります。
事前に問題を解決しておくか、少なくとも重要事項説明で正確に告知しておくことが、トラブル防止の鍵となります。
庭木の剪定・伐採にかかる費用の目安
一般的な剪定費用
庭木の剪定費用は、木の高さと本数によって大きく異なります。一般的な目安は以下の通りです。
低木(高さ3m未満):1本あたり3,000円〜5,000円
中木(高さ3m〜5m):1本あたり7,000円〜15,000円
高木(高さ5m以上):1本あたり15,000円〜30,000円
ただし、これはあくまで剪定の場合です。長年放置された庭木で大規模な剪定が必要な場合や、特殊な樹種の場合は、これ以上の費用がかかることもあります。
伐採・抜根の費用
木を完全に撤去する場合は、伐採費用に加えて抜根費用がかかります。抜根とは、地中に残る根を掘り起こして除去する作業です。
伐採費用:1本あたり10,000円〜50,000円(高さ・太さによる)
抜根費用:1本あたり5,000円〜30,000円
処分費用:軽トラック1台分で10,000円〜20,000円
竹林の除去は特に高額で、面積にもよりますが、50万円〜100万円以上かかることも珍しくありません。
費用を抑えるコツ
庭木の整理費用を抑えるには、以下の方法が有効です。
まず、複数の業者から見積もりを取ることが基本です。業者によって価格設定が異なるため、最低3社以上から見積もりを取り、比較検討しましょう。
また、繁忙期を避けることも重要です。庭木業者は春と秋が繁忙期となるため、夏や冬に依頼すると割引が適用される場合があります。
さらに、自治体の補助金制度を確認することをおすすめします。空き家の適正管理を促進するため、庭木の剪定・伐採費用に補助金を出している自治体もあります。
業者選びで失敗しないためのチェックポイント
資格・保険の確認
庭木の剪定・伐採は危険を伴う作業です。万が一事故が起きた場合に備え、賠償責任保険に加入している業者を選びましょう。また、造園施工管理技士や樹木医などの資格を持つスタッフがいる業者は、技術面でも信頼できます。
見積もりの明確さ
見積書の内容が曖昧な業者は避けましょう。「作業一式」のような記載ではなく、どの木をどのように処理するか、処分費用は含まれているかなど、詳細が明記されている見積書を出す業者を選ぶことが重要です。
近隣への配慮
作業中の騒音や、枝葉の飛散など、近隣への配慮ができる業者かどうかも確認しましょう。事前の挨拶回りを代行してくれる業者もあります。空き家の場合、所有者が現地にいないことも多いため、こうした配慮ができる業者は心強い存在です。
自分でできる最低限の庭木管理
業者に依頼する前に、自分でできる範囲の管理を行うことで、費用を抑えることも可能です。
低木の剪定
高さ2m程度までの低木であれば、剪定ばさみや刈り込みばさみを使って自分で剪定できます。ホームセンターで道具を揃えても5,000円〜10,000円程度です。
除草・清掃
庭全体の除草や落ち葉の清掃は、定期的に行うことで、業者に依頼する際の作業量を減らし、費用を抑えることができます。年に2〜3回、現地を訪れて最低限の管理を行うことをおすすめします。
注意が必要な作業
一方で、高所作業が必要な高木の剪定、電線に近い場所での作業、チェーンソーを使う伐採作業などは、危険を伴うため、必ず専門業者に依頼しましょう。無理をして事故を起こしては元も子もありません。
まとめ:庭木の整理は空き家売却の重要な準備作業
空き家の庭木・植栽の問題は、放置すればするほど深刻化し、近隣トラブル、売却価格の下落、税負担の増加など、さまざまな不利益を招きます。
売却を検討している空き家をお持ちの方は、まず現地を確認し、庭木の状態をチェックしてください。越境がないか、近隣に迷惑をかけていないか、電線に接触していないかなど、問題点を把握することが第一歩です。
問題が見つかった場合は、早めに専門業者に相談し、売却前に解決しておくことで、スムーズな売却と適正価格での成約につなげることができます。庭木の整理は、空き家売却における重要な準備作業のひとつとして、しっかりと取り組んでいきましょう。


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