空き家売却で越境物がある場合の注意点|隣地との協議と是正費用を解説

空き家知識

空き家売却で越境物が問題になるケースとは

空き家を売却しようとした際、境界確定測量を行って初めて「隣地の塀が敷地内に入り込んでいた」「自分の家の屋根の軒先が隣地上空に出ていた」といった越境物の存在が発覚するケースは少なくありません。越境物とは、本来の境界線を越えて構築物や樹木の枝などが隣地・自地にまたがって存在している状態を指します。長年放置されていた空き家では、所有者が亡くなる前の代から境界について曖昧なまま生活していたことも多く、いざ売却の段階になって思わぬトラブルとして表面化することがあります。

越境物には大きく分けて「自分の敷地から隣地へ越境しているもの」と「隣地から自分の敷地へ越境しているもの」の2パターンがあります。代表的な越境物には次のようなものがあります。

  • ブロック塀やコンクリート塀の基礎部分
  • 建物の屋根の軒先やひさし
  • 雨樋・給排水管
  • 樹木の枝や根
  • 物置やカーポートの一部
  • 擁壁の一部

これらの越境物を放置したまま売却を進めると、買主が住宅ローンを利用する際の審査で問題視されたり、引き渡し後に隣地所有者とのトラブルが買主に引き継がれたりするリスクがあります。そのため、越境物の有無を早期に確認し、必要な対応を取ることが空き家売却をスムーズに進めるうえで欠かせません。

越境物の調査方法と確認すべきポイント

境界確定測量で越境を発見する

越境物の有無を正確に把握するには、まず境界確定測量を実施することが基本です。土地家屋調査士に依頼し、隣地所有者の立会いのもとで境界標を確認しながら測量を行います。測量費用の相場は、隣接地の数や道路の有無、境界標の有無によって変動しますが、一般的な戸建て住宅で35万円〜80万円程度、官民境界(道路との境界)が絡む場合は60万円〜100万円程度かかることもあります。測量期間は1ヶ月〜3ヶ月程度が目安です。

登記簿や公図との照合

測量と並行して、法務局で取得できる公図や地積測量図、登記簿謄本を確認し、現況の建物や塀の位置が登記情報と一致しているかを照合します。古い空き家では、建物図面が実際の建築状況と異なっていることも珍しくありません。

目視での事前チェック

専門家に依頼する前でも、所有者自身が現地を確認することで越境の兆候に気づける場合があります。塀が明らかに斜めになっている、隣家の屋根の一部が自分の敷地の上空にかかっている、樹木の枝が隣地の窓に接触しているといった状態は、越境の可能性が高いサインです。

越境が判明した場合の対応方法

隣地所有者との協議

越境物が確認された場合、まずは隣地所有者と話し合いを行い、現状を認識してもらったうえで今後の対応を協議します。話し合いの結果、次のような選択肢が考えられます。

  • 越境物を撤去・是正する
  • 越境を認めたうえで「覚書」を締結し、現状のまま売買を進める
  • 買主に事情を説明し、将来的な是正について引き継ぐ

特に建物の一部がわずかに越境しているようなケースでは、物理的な撤去が困難なことも多く、覚書の締結によって解決するケースが実務上は多く見られます。覚書には、越境の状況、将来建て替え時に是正することへの合意、越境部分の使用に関する承諾などを明記します。

覚書作成の費用と流れ

覚書の作成は、司法書士や弁護士に依頼すると5万円〜15万円程度の費用がかかります。自分たちで作成することも可能ですが、後々のトラブルを避けるためには専門家によるチェックを受けることをおすすめします。作成の流れは以下の通りです。

  1. 越境状況の写真撮影・図面作成
  2. 隣地所有者との協議・合意形成
  3. 覚書案の作成
  4. 双方の署名捺印
  5. 売買契約時に買主へ覚書を提示

越境物の撤去・是正費用の相場

ブロック塀の一部撤去であれば1平方メートルあたり1万円〜2万円程度、樹木の枝の剪定であれば1本あたり1万円〜3万円程度が目安です。雨樋や屋根の軒先の是正となると、足場代を含めて20万円〜50万円程度かかることもあります。撤去費用を売主・買主・隣地所有者のどちらが負担するかは、越境の原因や経緯によって異なるため、事前の協議で明確にしておくことが重要です。

実際にあった事例から学ぶ注意点

ある売主のケースでは、親から相続した空き家を売却しようとした際、境界確定測量を実施したところ、隣家のブロック塀の基礎部分が約15センチメートル自宅の敷地に越境していることが判明しました。塀自体は隣家が数十年前に設置したもので、当時の所有者同士では特に問題視されずに放置されていた状態でした。

売主は不動産会社の担当者と相談のうえ、まず隣地所有者に事情を説明し、境界確定と越境の事実を共有しました。隣地所有者は高齢で、塀の撤去や建て替えには消極的だったため、最終的に「将来、隣家が塀を建て替える際に是正する」という内容の覚書を締結することで合意しました。覚書の作成には司法書士に依頼し、費用は8万円程度でした。

この覚書を売買契約に添付し、買主にも事前に説明したことで、買主も納得したうえで契約に至りました。結果として、境界確定測量から覚書締結、売却完了までにかかった期間は約2ヶ月半でした。もし越境の事実を隠したまま売却していれば、引き渡し後に買主とのトラブルに発展し、契約不適合責任を問われる可能性もあったケースといえます。

売却をスムーズに進めるためのポイント

越境物がある空き家を売却する際は、次の点を意識することでトラブルを未然に防ぐことができます。

  • 早めに境界確定測量を実施し、越境の有無を客観的に把握する
  • 越境が判明した場合は隠さず、隣地所有者と誠実に協議する
  • 覚書を作成し、書面で将来の対応方針を明確にしておく
  • 買主に対しても越境の事実と対応内容を正直に説明する
  • 不動産会社や土地家屋調査士、司法書士など専門家と連携して進める

特に、越境物を告知せずに売却してしまうと、引き渡し後に契約不適合責任を問われるリスクが高まります。買主が安心して購入できるよう、事前の情報開示と書面での取り決めを徹底することが、円滑な売却につながります。

よくある質問

Q1. 越境物があると売却価格に影響しますか?

A. 越境の程度や解決状況によって影響は異なります。軽微な越境で覚書が締結されていれば、価格への影響はほとんどないケースが多いです。ただし、未解決のまま放置されている場合は、買主が住宅ローン審査で不利になったり、価格交渉の材料にされたりすることがあります。

Q2. 隣地所有者が協議に応じてくれない場合はどうすればよいですか?

A. まずは書面で通知を行い、記録を残しながら粘り強く交渉することが基本です。それでも応じてもらえない場合は、弁護士に相談し、内容証明郵便での通知や調停手続きを検討することになります。解決までに数ヶ月〜1年程度かかることもあるため、売却スケジュールに余裕を持たせることが大切です。

Q3. 越境物の撤去費用は誰が負担するのですか?

A. 原則として、越境物を設置した側(原因を作った側)が撤去費用を負担するのが一般的です。ただし、長年の慣習で双方が黙認してきた場合など、経緯によっては折半で対応するケースもあります。トラブルを避けるためにも、費用負担の割合は覚書に明記しておくことをおすすめします。

まとめ

  • 越境物とは、塀や屋根、樹木などが境界線を越えて隣地・自地にまたがっている状態を指す
  • 境界確定測量(費用相場35万円〜100万円、期間1ヶ月〜3ヶ月)で越境の有無を確認することが第一歩
  • 越境が判明した場合は隣地所有者と協議し、撤去または覚書締結による解決を図る
  • 覚書作成費用の目安は5万円〜15万円で、司法書士や弁護士への依頼が安心
  • 撤去・是正費用は内容によって数万円〜50万円程度と幅があり、負担割合を明確にしておく
  • 越境の事実を隠さず買主に告知することで、契約不適合責任のリスクを回避できる
  • 専門家と連携しながら早めに対応することが、スムーズな空き家売却につながる

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