空き家売却で越境物がある場合の注意点|覚書と解決方法を解説

空き家知識

空き家を売却しようとした際、隣地との境界をまたいで塀や屋根、樹木の枝などが越境していることに気づくケースは少なくありません。長年住んでいた所有者や相続人が気づかないまま放置されていた越境物は、いざ売却の段階になって買主や仲介会社から指摘され、契約が暗礁に乗り上げる原因になります。本記事では、空き家売却における越境物の種類とそれが売買に与える影響、具体的な解決方法、費用相場、そして実際にあった事例までを詳しく解説します。

越境物とは何か|よくあるパターンを知る

越境物とは、敷地境界線をまたいで隣地にはみ出している工作物や植栽、建物の一部を指します。空き家の売却現場でよく見られる越境物には、以下のようなパターンがあります。

まず多いのが「屋根・軒先の越境」です。古い木造住宅では建築当時の慣習として、隣地との境界ギリギリまで建物を建てていることが多く、経年で屋根材が傷んで伸びたり、雨樋が隣地上空に突き出ていたりすることがあります。次に「ブロック塀・擁壁の越境」も非常によくあるケースで、境界線上に塀を建てたつもりが、測量してみると数センチから十数センチ隣地側にはみ出していたということが珍しくありません。さらに「樹木の枝・根の越境」も典型例で、庭木の手入れが行き届かないまま放置された空き家では、枝が隣地上空に伸び、落ち葉や日照トラブルの原因になっていることがあります。加えて「地中埋設物の越境」として、給排水管や浄化槽の配管が隣地の地中を通っているケースもあり、これは目視では発見しづらいため見落とされがちです。

逆に、隣地の工作物がこちら側に越境している「被越境」のケースもあります。自分の敷地に隣家の塀や樹木がはみ出している場合も同様に解決が必要です。越境の有無は、確定測量を行い境界確定図面と現況を照合することで初めて正確に把握できます。測量費用の相場は土地の形状や隣接地の数にもよりますが、一般的な戸建て住宅で35万円〜80万円程度が目安となります。

越境物が売却に与える影響

越境物の存在は、空き家の売却においてさまざまな形で影響を及ぼします。まず最も大きいのは「買主からの心証悪化と価格交渉」です。境界トラブルを抱えた物件は、将来的に自分が同じ問題を引き継ぐことになるため、買主は購入をためらったり、リスク分を価格に反映させるよう値引き交渉を行ったりします。越境の程度や解決の難易度によっては、査定額から5%〜15%程度の減額要因になることもあります。

次に「住宅ローン審査への影響」が挙げられます。金融機関によっては、境界が不明確な土地や越境物が未解決の物件に対して融資の条件を厳しくしたり、融資自体を見送ったりすることがあります。買主が住宅ローンを利用する一般個人である場合、この点がネックとなり成約そのものが流れてしまうリスクがあります。

さらに「契約不適合責任のリスク」も無視できません。越境物の存在を知りながら買主に告知せずに売却した場合、引き渡し後に発覚すると契約不適合責任を問われ、損害賠償請求や契約解除に発展する可能性があります。空き家は相続によって取得したケースが多く、売主自身が越境の事実を正確に把握していないことも多いため、事前の現地確認と測量が不可欠です。

加えて「仲介会社による重要事項説明の記載義務」もあります。宅地建物取引業法上、既知の越境物は重要事項説明書に記載する義務があり、記載漏れがあれば仲介会社の責任問題にも発展します。したがって越境物がある空き家を売却する際は、早い段階で専門家に相談し、事実関係を整理したうえで販売活動に入ることが、トラブル回避と適正価格での売却の両方につながります。

越境物の解決方法|覚書締結と撤去交渉

越境物が見つかった場合、必ずしもすぐに撤去しなければならないわけではありません。実務上よく用いられる解決方法は大きく分けて3つあります。

1つ目は「越境物に関する覚書(確認書)の締結」です。これは、越境の事実を隣地所有者と相互に確認し、将来の建て替えや改修の際には越境状態を解消することを約束する書面を取り交わす方法です。覚書には「現状の越境を相互に認め、損害賠償請求はしない」「将来の建替え時には越境を解消する」といった条項を盛り込みます。この覚書を売買契約に添付することで、買主も安心して購入でき、将来の紛争予防にもなります。司法書士や土地家屋調査士に作成を依頼する場合の費用相場は5万円〜15万円程度です。

2つ目は「越境物の撤去・是正工事」です。ブロック塀や屋根の越境など物理的に是正可能なものは、売却前に撤去・修繕してしまうのが最も確実な解決方法です。塀の建て直しであれば1mあたり1万5000円〜3万円程度、屋根の軒先カットであれば数万円〜20万円程度が目安です。樹木の枝の剪定であれば1本あたり1万円〜3万円程度で対応できることが多く、比較的低コストで解決できる場合もあります。

3つ目は「隣地所有者との話し合いによる合意形成」です。越境が軽微で撤去も難しい場合、金銭的な解決(越境部分の土地を買い取る、または使用料を支払う)で合意する方法もあります。この場合は土地の一部売買契約や賃貸借契約を別途締結することになり、司法書士費用を含めて10万円〜30万円程度の実費がかかることが一般的です。

いずれの方法を選ぶにしても、隣地所有者との関係性が良好であることが前提となります。空き家は所有者が遠方に住んでいたり、相続で疎遠になっていたりするケースが多いため、専門家(土地家屋調査士や弁護士)を間に立てて交渉を進めることをおすすめします。

事例紹介|屋根の越境が発覚し覚書で解決したケース

築45年の木造2階建て空き家を相続したAさんは、売却のために測量会社に依頼したところ、2階の屋根と雨樋が隣地上空に約20センチ越境していることが判明しました。隣家は昔からの顔見知りであったため、Aさんは土地家屋調査士を介して事情を説明し、覚書の締結を提案しました。

当初、隣家側は「将来のトラブルが心配」と難色を示しましたが、「買主が将来建て替える際には越境部分を解消する」という条項を盛り込んだ覚書案を提示したことで合意に至りました。覚書作成費用は8万円、手続き全体で約1か月を要しましたが、この覚書を売買契約時に重要事項説明書とあわせて買主に開示したことで、買主も安心して購入を決断しました。結果として、当初の査定額からの大きな値引きもなく、相場通りの価格で売却を完了できました。もし越境を放置したまま売却していれば、引き渡し後に買主と隣地との間でトラブルが発生し、Aさんが契約不適合責任を問われていた可能性もあったケースです。

よくある質問

Q1. 越境物があると必ず売却できないのですか?

いいえ、越境物があっても売却自体は可能です。重要なのは越境の事実を隠さず、測量や覚書によって状況を明確にしたうえで買主に告知することです。覚書が整っていれば、買主も将来のリスクを把握したうえで購入を判断できるため、売却自体が不可能になるわけではありません。ただし、告知を怠ると契約不適合責任を問われるリスクが高まるため注意が必要です。

Q2. 越境物の解決費用は売主と買主どちらが負担するのですか?

原則として、越境物を発生させた側(多くは越境している建物・工作物の所有者)が解決費用を負担するのが一般的です。空き家の売主が越境させている側であれば、測量費用・覚書作成費用・撤去費用は売主負担となるケースがほとんどです。ただし、話し合いによって按分するケースもあり、最終的には当事者間の合意によります。

Q3. 隣地所有者が覚書締結に応じてくれない場合はどうすればよいですか?

まずは専門家(土地家屋調査士や弁護士)を介して冷静に交渉を進めることが重要です。それでも応じてもらえない場合は、越境状態を現況のまま買主に開示し、価格に反映させたうえで売却する方法もあります。最終手段としては、民事調停や筆界特定制度を利用して法的に解決を図ることも可能ですが、時間と費用がかかるため、できる限り話し合いでの解決を目指すべきです。

まとめ

  • 越境物には屋根・塀・樹木・地中埋設配管などがあり、測量によって初めて正確に把握できる
  • 越境物を放置すると価格交渉材料にされたり、ローン審査に影響したり、契約不適合責任を問われるリスクがある
  • 解決方法は「覚書の締結」「撤去・是正工事」「金銭的合意」の3パターンが一般的
  • 覚書作成費用の目安は5万円〜15万円、測量費用は35万円〜80万円程度
  • 越境の事実は隠さず買主に告知し、重要事項説明書にも正確に記載することがトラブル回避の鍵
  • 隣地所有者との関係が良好なうちに、早めに専門家へ相談して解決を進めることが重要

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